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スウェーデンコラム「瑞筆」

第4回 スウェーデンのクサイもの/島田晶夫

スウェーデンから日本に帰って来て、多くの人からスウェーデンについていろいろな質問をされたが、一番多かったのはやはり、「食べ物」についてだった。
日本とはもちろん食文化が違うので、初めて食べるものも多かったが、その中のいくつかは僕の中でも強烈な印象を残し今に至っている。
もちろんパン、チーズ、ハムやパテ等日本では味わったことの無いような美味しいものが気軽に味わえたし、日本人にとって生の鮭などが手に入るような恵まれた環境でもあった。
しかし、しかしである。どうやっても一線を超えられない食べ物達があった。今回はどうしてもそれらを紹介したいと思う。

まず庶民の味と言える“ミルクライス”。その名の通り米を牛乳で炊いたお粥である。そこに砂糖・シナモン・バターをたっぷりと入れたものなのだが、これが夕食のメインに出され、子供から大人まで多くのスウェーデン人が嬉々として食べるのである。
好きになる日本の方もいるのかもしれないけれど、僕の場合は4年間で結局スプーン1杯のミルクライスで拒絶反応を起こしてしまい、この文章を書いている今も鳥肌が立つのである。
ちなみに、このミルクライス用に売っているお米(スウェーデンではインド米やタイ米等数種類のお米がスーパーで売られている。)は、スペイン辺りで栽培されていて炊いて食べると一番日本の米に似ていて美味しかったのだが、ミルクライスの写真がパッケージになっていて、大変複雑な心境であった。

次に思い出すのは、豚の血を固めて作られたハムである。
これはスウェーデンでは一種の郷土料理らしく、ルーツを探ればヴァイキング時代からの伝統的な食べ物らしい。
初めて食べたとき、僕はそれが何なのか知らずに食べてしまった。ただの、ちょっと赤黒い色をしたハムと言う感じで、フライパンでさっと炒めて出されたのだが、とても美味くて「うまいうまい」と次々食べた後で、それが豚の血で作られた物と聞かされた途端に、全身の力が抜けてしまった。
どうも「血」という所がダメだったようで、その後何回進められても、もう食べることができなかった。
この辺りも周りの日本人は総じて食べられないものの一つのようで、僕が食べた事を知った日本人の先輩方に「島田君もがんばるなー」と感心されてしまった。
でも、本当は知らなかっただけなのだが・・・

さて、3つ目に取り上げたいのだが、大御所というべきか、「シーストロミング(スールストロミング)」である。最近TVでもよく取り上げられているので御存知の方も多いかもしれないが、あの世界で3本指と言われる臭い魚の缶詰である。元々はサーメと呼ばれるラップランド地方の先住民の保存食であり、冬の食料不足を補うため昔からの知恵として作られたものであったらしい。
簡単に言うと塩漬け鰊(ニシン)を缶に詰めて発酵させたものなのだが、これがやたらと臭い。
鼻の曲がるどころか息が出来なくなる程で、TVでも缶詰を開けたとたん、出演者があまりの臭さに椅子から転げ落ちていたが、決して大げさではないと思う。
こればかりは経験してみないとわからないと思うが、本当に臭いと言う言葉を超えるニオイである。
ところで味はと言うと、これが美味なのである。
僕も二回ほど挑戦し、その味はお世辞ではなく、美味しいと思う。だからこそ一度その味を知ってしまった人は、その臭さにも負けず、毎年毎年売り出される秋の初めにはこのシーストロミングを買いにスーパーに走ることになる。
しかし、全てのスウェーデン人がシーストロミングを好きな訳ではない。
うっかり住宅街でこの缶を開けようものなら、たちまち苦情が押し寄せる。(当たり前だが、家の中でこの缶詰を開ける人はまずいない。と言うより開ければその家では人が住めなくなる程の臭いが染みつくはずである)もし庭先などで、シーストロミングを楽しみたいのであれば、まず近所の家々をまわり、「今から食べますので」と挨拶をするのが常識であると聞かされたが、それもそうだよなぁーと納得した。
そのせいか海や山などの人気のないところで楽しむ人が多い。

さて、興味のある方で、仮にシーストロミングを手に入れた際には、2つの事に注意してください。
1つは、バケツなどに水を張り、その中でフタを開けることです。そのまま開けるとものすごい勢いで臭い漬け汁が噴き出し、大変なことになります。汁が服に付いた場合、洗濯しても臭いは取れません。捨てるしかないでしょう。
そして2つ目は、食べるときは必ず風上に立ち、臭いを極力かがずに口に入れることです。風の強い日が、シーストロミングの一番の条件かもしれない・・・。

これからスウェーデンに旅立たれる方は、是非一度トライしてみて下さい。
そのすごさは、経験者のみぞ知る、です。

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Columnist Profile
島田晶夫さん
1971年北海道苫小牧市生まれ。
1995年国立高岡短期大学産業工芸学科木材工芸専攻(富山県)卒業後、(財)スウェーデン交流センター(当別町)木材工芸工房の研修員として在籍。 1997年スウェーデン・カペラゴーデン手工芸学校 家具&インテリア科に留学、2000年スウェーデン・OLBY DESIGN(株)入社。 2001年帰国しDESIGN STUDIO SHIMADA設立とともに(財)スウェーデン交流センター木材工芸工房主任研修員として活躍中。
展覧会として、2002年第15北の生活産業デザインコンペティション入選・個展ギャラリーたぴお(札幌)、2003年グループ展(三越倉敷支店)、2004年2人展コンチネンタルギャラリー(札幌)、暮らしの中の木の椅子展入選。


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