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スウェーデンコラム「瑞筆」

第6回 懐かしの冬のグゥーディス/島田晶夫

先日スウェーデン人の友人に鮭トバを送ってほしいと言われ、スルメやさきイカと一緒に送ってみた。日本にも住んでいたことがあるので、その時に珍味の味を覚えたらしい。
「時々無性に食べたくなるんだ」と聞いて、それならば、と僕もスウェーデンからちょっとしたお菓子を送ってもらうことにした。グゥーディスと呼ばれるグミキャンディのようなものだ。

スウェーデン人はみんなこのグゥーディスが大好きである。老若男女、いつでもどこでもこのグゥーディスを食べているといっても過言ではない。どんなものかというと、いろいろな形、色、味のグミキャンディーに砂糖をまぶしてあったり、チョコレートがコーティングしてあったりして、口の中に入れると独特の歯ごたえと甘さがあるお菓子である。結構どぎつい色のものが多いし、味もソーダ味やら、ちょっと人工的なフルーツ味だったりで、こんなの食べて体に悪いんじゃないか?と思ってしまうのだが、なぜか妙にクセになり、止まらなくなってしまうのである。
そんなわけで、この冬の夜にグゥーディスを食べながら借りてきたビデオを見ていると、いったい何度スウェーデンの暗くて長い冬をこうして過ごしたものか、とすっかり懐かしい気持ちになってしまった。

ご存知の通りスウェーデンの冬は長くて暗い。夏に白夜があるように、冬はずっと夜かと思うほど本当に昼が短いのである。しかも昼といってもほとんど毎日どんよりとした曇り空で、気分まで灰色になってきてしまうほどである。
僕の住んでいたウェーランド島はそれでもまだスウェーデンの中ではかなり南に位置していたため、雪も少ないし、気温もそれほど極端に寒くは無い。とは言っても日が昇るのが朝9:00過ぎなので、通学・通勤時間はまだ真っ暗で街灯が頼りだし、冷え込みも一番厳しいので、出かけるときには気合を入れて家を後にしたものだ。暗い中登校している小学生などを見かけると大変だよなーと僕なんかは同情を禁じ得ないが、彼らにしてみれば当たり前の事だし、それが普通の冬なのだろう。
もっと北、北極圏に近い地方になると、太陽がまったく出ない日が2週間以上も続くと聞いている。ほとんど一日中夜のような中で、しかも気温もマイナス40ºC以上になると聞いて、例えばオーロラが見られるぞ、などと言われても僕は到底行く気になれず、冬の間は北のほうに足を伸ばすことはなかった。

「暗くて寒い」と言うのは、一人でいたくないという気にもさせるらしく、学校が終わり寮に戻ると、みんな何となく一部屋に集まり、TVやビデオを見たり、話をして過ごすことが多かった。夏は夏で何かと理由を付けて(理由が無くても)パーティ三昧ではあるけれど、冬はまたそのどんよりとしたウサを晴らすのによく集まってお酒を飲んだり、暖炉でバーベキューをしたりした。そしてそんな時にも欠かせないのがグゥーディスであり、誰と言うわけではなくみんな大量に持ち寄ってはそれを肴にお酒を飲んでいた。甘くて胸やけするんじゃないかとこっちが心配になるほどみんな手のひら一杯にむしゃむしゃと食べる。もちろんみんな翌日も朝からむしゃむしゃ食べているので、心配などは無用であるが。

さて、もう一つ欠かせないものと言えばキャンドルだろう。あちらでは年中何かと言えば電気を消してキャンドルを囲むのだが、冬のキャンドルはそれだけで心和み、話をしているだけで、みんなが何か親密になれるようなそんな気分にさせてくれた気がする。
外から見てもキャンドルのぼんやりとした暖かい灯りは心をほっとさせてくれるので、そのせいかどうか田舎に行くとほとんどの家がカーテンを閉めず、キャンドルの灯りをのぞかせていることが多かった。ちなみに夏になるとどの家もカーテンをきちんと閉める。昼と夜の区別がほとんどない白夜では、生活のリズムを整えるためカーテンで夜を作るというわけだ。昼が長いのも、夜が長いのも、どちらも大変なものである。

グゥーディスもキャンドルもスウェーデンの人にとっては生活の必需品であるらしく、どんな小さな町や村でも、店に行けば必ずかなりの種類を売っている。大きな街になればキャンドル専門店まであり、いったいどんな時に使うのだろうか、とか、火をつけるのがもったいないのではないか、という凝ったものから、お墓参り用の極めてシンプルなものまで、たくさんの色、形、サイズのものが一同に見ることができる。燭台やキャンドルホルダーなども充実していて本当に楽しく、用も無いのによく通ってしまっていた。
グゥーディスも袋に包装されているものもあれば、アクリルの箱にいろいろな種類が入っていて量り売りをしてくれるところもある。一度友達の誕生日にブラックジョークのつもりで5kg買って贈ったことがある。5kgと言えばかなりの量であり、紙袋に片っ端から詰めていると4〜5歳くらいの子供が羨望のまなざしで僕を食い入るように見ていたことがあった。レジのおばさんも「あんた、こんなにどうするの?」と真剣に聞いてくる量で、贈った友達はそれを見たとき、驚愕とそして喜びに手を挙げて言葉にならない声をあげていたのだった。

ところで最後になるのだが、グゥーディスの中に一つだけ僕の苦手な味がある。ラークリスと別名もちゃんとあって、スウェーデン人の中にあっては絶大な人気を誇るのだが、他のものとは全く違う味がするのである。黒い色をしているのがほとんどで、形は様々なのだが、とにかく黒い色はすべて疑ったほうがいいかもしれない。味はなんといっていいのか、口に入れた瞬間は酢こんぶのような味がして、そのまま噛んでいるとまるでインクのような風味と甘みが広がる。僕はいつもここでギブアップしてしまうが、もしかしたらその先に人を魅了するようなすばらしい味が隠されているのかもしれない。そう思い、また恐る恐る試してみては打ちのめされ、そして今日もスウェーデン人の味覚の深さを知らしめられるのであった。

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Columnist Profile
島田晶夫さん
1971年北海道苫小牧市生まれ。
1995年国立高岡短期大学産業工芸学科木材工芸専攻(富山県)卒業後、(財)スウェーデン交流センター(当別町)木材工芸工房の研修員として在籍。 1997年スウェーデン・カペラゴーデン手工芸学校 家具&インテリア科に留学、2000年スウェーデン・OLBY DESIGN(株)入社。 2001年帰国しDESIGN STUDIO SHIMADA設立とともに(財)スウェーデン交流センター木材工芸工房主任研修員として活躍中。
展覧会として、2002年第15北の生活産業デザインコンペティション入選・個展ギャラリーたぴお(札幌)、2003年グループ展(三越倉敷支店)、2004年2人展コンチネンタルギャラリー(札幌)、暮らしの中の木の椅子展入選。


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