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スウェーデンコラム「瑞筆」

第2回 暖炉のある図書館/深井せつ子さん

2001年8月のある日、私はデンマークのヘルシンオアという町に滞在していました。この港町は、もう手が届くほど近くにスウェーデンが見えます。フェリーは朝から晩までひっきりなしに両国を往復しているので、何年か前にここに来た時も、まるで引き寄せられるようにフェリーに乗船し、スウェーデン側に渡ったことがありました。

今日は天気も上々だし、時間もたっぷりあります。対岸に渡って電車でマルメに行ってみよう、とフェリーに乗り込みました。
このフェリーの乗船時間は、たった20分間。でも国から国へ渡る船と言うのは、船体が陸から離れると、やはり胸おどるものを感じます。日帰りにもかかわらず、遠ざかる町を見つめて、「あぁ、あの町に居たんだ」などと妙に感じ入ったり…。

フェリーがスウェーデンのヘルシンガーに接岸すると、そこはもう鉄道駅。私はすぐに時刻表を手に入れ地図を広げて調べていたのですが、ふと行き先を変更することにしました。「そうだ、知らない町へ行こう」。
ヨーテボリより下の西海岸と言うのは夜行列車で通ったきりなので、このあたりを指でなぞって、Ängelholmという町を選びました。入り江になっているので、もしかしたら良いところなのではないだろうか?と。

電車は、都会のヘルシンボリを離れると、すぐに田園地帯となり、黄金色の麦畑が海のように広がっています。各駅電車は、のんびりゆっくりこの田園の大地を走ると、30分位でÄngelholmに到着しました。駅舎は木造の小さな建物。

駅で町の地図や資料を手に入れると、ここはヨットハーバー、キャンプ場、ホテルなどがあるたいへん美しい海岸の町でした。中心地は川が蛇行し、地形も魅力的。

セントラムまで徒歩でどのくらいなのか女性の駅員にたずねると、「そこの橋を渡ると15分くらいよ」とのこと。目の前は川というより運河と言う風情でボートや遊覧船が行き交っています。橋を渡り、いくつかブロックを過ぎると、白いkyrka(教会)があり、その隣に木造の頑丈な家が見えました。瓦屋根のその家は18世紀後半の市庁舎で、現在は観光案内所。そしてそこが中心地の広場だったのです。

ストーラ・トーリ(大広場)という名ですが、大都会を持つ現代のスウェーデンでは、小さな小さな広場。地元の人々が、夏の陽をあびて外のカフェでゆったりくつろいでいます。

広場のむこうに図書館が見えたので入ってみました。小さな町としては、たいへんな蔵書の量で、館内は木材がふんだんに使用された温かな味のある建築です。絵本や資料などを見た後、私は円形のソファーコーナーを発見しました。ちょっと暗くて静かな場所。

閲覧フロアから何段か低くなっていて、本当の円形でソファも壁に沿って円形で色は海の底のようなブルーです。一角には暖炉がしつらえてあって、いつでも火をおこせるようにマキが積んでありました。このソファに腰を下ろし、しばらくは考え事をしていたのですが…。私はどうやら眠り込んでしまっていたようなのです。旅行中に、それもたったひとりの時に外で眠ることはあまり経験がないのですが。よほど気持ちが良かったのでしょう。

目覚めて、すっきりした顔で立ち上ると、カウンターの係員の女性がこちらをふりむきにっこり笑顔を見せてくれました。もしかしたら、この人がさりげなく見守ってくださっていたのかもしれない。ありがとうという気持ちの笑顔を返し図書館を出ました。

白夜の季節の夕刻は、まだまだたいへん明るく、広場のカフェは以前よりも人が増えて陽光を楽しむ人でいっぱいでした。

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Columnist Profile
深井せつ子さん
神奈川県出身。画家。
北欧各地の清涼な風景に強く惹かれ、北欧行を重ねている。個展や絵本をはじめとする著書も北欧をテーマとしたものが中心。近著に「デンマーク四季暦」(東京書籍)、「小さな姫の勇気の教え」(KKベストセラーズ)、「北欧ヒーリング紀行・森の贈り物」(大和出版)。スウェーデンハウス株式会社のカレンダーは、隔年で制作担当。日本北欧友の会会員、日本スウェーデン文学協会会員。


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